ファンキー末吉氏の記者会見(前半)

JASRACの運用問題に関する記者会見(1)より

 

(冒頭8分間程度、記者会見の準備)

 

ファンキー末吉「どうも。本日はお集まりいただきましてどうもありがとうございます。ファンキー末吉でございます。あと、法律的な何か補足をやってもらうときのために、今回いっしょにJASRACと裁判をいっしょに戦いました、鈴木弁護士に同席していただいております。

 それでは、まず概要から説明させていただきますが、まず私はですね、ものすごい稀な立場として、まず演奏家であります。ドラマーとしていろんなライブハウスで演奏してきました。コンサートホールもですけれども。あと作曲家でございます。「Runner」*1という曲は私の曲でございます。ですので、著作権に関しては、私はずっともらう立場でしかなかったわけです。

ところが、八王子の「Live Bar X.Y.Z.→A」に関与することになって、初めて払う側というものも見ることができて、もらう側、払う側、使う側という3つの立場を同時に経験する、非常に珍しい立場となったことで、分かったことがあります。

それは、ライブハウスというもので、当初ですね、足掛け9年になりますけれども、どのようにお金が集められて、どのように著作権者に、著作者に分配されているのかということが初めて分かった次第ですね。それは包括契約、サンプリング分配というものです*2

それに関しては、非常に、言ってみれば私がびっくりしたのは、JASRACさんはライブハウスに包括契約の契約書だけを送り付けて、結局ライブハウスでどんな曲を演奏してるのかを全然把握することがなく、お金だけを集める。そしてそれをサンプリング分配という、サンプリング店で、モニタ店でサンプリングをしてますと。それの結果によって分配しているということですが、じゃあ例えば、私自身「X.Y.Z.→A」というバンドで、かなりの数のライブを全国のライブハウスでやっておりますが、ライブハウスは包括契約著作権料を払っておりますが、私のほうには全然入ってきてないという現実がありましたので、

じゃあそのサンプリング店というのはどこにあるの、と聞きましたところ、それは言えないと。せめて、ロックの店は何パーセントあるんですか。ジャズの店は何パーセントあるんですか。そうじゃないと全部が歌謡曲だと、「X.Y.Z.→A」のような、ハードロックバンドの曲はサンプリングされないことになるので、そのサンプリングはまったく正しくないということになりますが、ロックが何パーセント、ジャズが何パーセントということも一切教えてくれません。

じゃあモニタ店がどこにあるのか。例えば私、何百本かのライブを集計しまして、そのライブハウスは名だたる、全国の名だたるライブハウスですけれども、一個もサンプリング店ではない。じゃあ、いったいどこにサンプリング店があるんだろう、という質問に関しては、足掛け9年、JASRACは一切答えてくれません。答えようとしないというか、一切答えたがらない状態は、現在におけるまで続いております。

そして、私さきほども言いましたように払う側、もらう側、両方ありますが、演奏する側、3つの立場があるんですが、結局払う側として、JASRACと裁判に訴えられて、裁判ということになりましたが、先日結論が出まして額が決まりましたので、完全に弁済が終わりまして、払う側の立場はもう終わっております。

今度は演奏する側、もらう側の立場として、裁判の中で、いろんな問題点が、新たな問題点が浮き彫りになりました。

まず、一番大きかったのですが、第一審の判決を受けて、「Live Bar X.Y.Z.→A」では、JASRAC管理楽曲を演奏しない。JASRAC管理楽曲以外のものだけで、ライブをやる方針にしますと。もしJASRAC管理楽曲を演奏したい場合は、ご自身で許諾をとってください、とアナウンスしましたところ、なんと出演者からの許諾(の申し込み)は受け付けないという、JASRACから答が返ってきたそうです*3

これは、後で調べてみますと、(著作権等)管理事業法16条違反にあたるということで、非常にこれは、いくらなんでも法律違反、違法運営ではないかと私は思い、文化庁のほうに、調査をして、もしそうだった場合は業務改善命令を出してくれということを、さきほど上申書を提出しました。

その他、上申書の中には、包括契約の問題点、昔のようにデジタルが、ITが全然進化してなかった場合は、そのようにサンプリング分配によってしか方法がなかった時代もありますけれども、現在、JASRACの中にも、コンサートの中はもうITを使ってできるようになっております。

で、コンサートホールかライブハウスかっていうのは明確な、まったく区切りがありません。例えば、ライブハウスより小さなコンサートホールもありますし、いまライブハウスも巨大なライブハウスがありますので、コンサートホールの中にも飲食を置いてあるホールもあります。だから、これはライブハウスだ、これはホールだ、というのは、明確的に分けれるものではないのに、JASRACが勝手に決めているということでしょうか。

これはライブハウスなので包括契約しか認めない。包括契約しか認めないというのは私もそのようにされたので、そうだと思ってたのですが、文書が出てきました。JASRACの内部規約の中で、ライブハウスには包括契約以外は認めるなという文書も出てきておりますので、包括契約を無理強いしてると*4包括契約を強要してるというのは間違いないことだと私は思っております。

あと、さきほどの話に戻りますけど、許諾拒否というものは、まず2つの理由をJASRACは挙げてたのですが、ひとつはライブハウスのオーナーじゃないと認めない、出演者からは認めない。あと、店が、JASRACの債務が、弁済が終わっていないので、認めない、という2つの理由を挙げてきましたが、調べてみますと、JASRACに対して、過去の裁判で判決がおりてまして、そのような許諾拒否をしてはいけないという、まったくおんなじ立場での、そういうことをやってはいけないという例が、判例があります*5

それはJASRACに向けられたものなので、JASRACはそれを知りつつ、裁判所の言いつけを守らず、まだ同じことをしている可能性があります。そうなった場合は、もう管轄が文化庁ですので、文化庁長官が調べていただいて、もしそのような違法運営があるなら、すぐさまそれを改善命令を出し、改善できるまでは業務停止をしなければならない、そういう法、著作権法があり、(著作権等)管理事業法ですね、というのがありますので、それをお願いしてきたところです。

詳しい、法律に関してはちょっと鈴木さんからもちょっと後で、しゃべってもらっていいですか?(鈴木弁護士に尋ねる) ので、概枠として私がいちばん言いたいことを今から喋ろうと思います。

裁判の中でも、JASRACはずっと法律的には、私たち著作者は、JASRACに権利を委託している。権利はお前たちにはない、ということを言われました。末吉の曲は末吉のものではない。JASRACのものである。それは法律的に正しいのかもしれません。ところが、このように許諾拒否をされた場合、実際…今日、名前を出してもいいと本人に確認をとりましたので出さしていただきますが、同じく「爆風スランプ」というバンドで初期いっしょに活動してた、江川ほーじんという人間は、江川ほーじんというベーシストですが、自分の曲「無理だ!」*6というのを自分で演奏するために、自分で許諾申請をしました。ところが、JASRACはそれさえも却下する、拒否しました*7。ということは、自分の曲を自分で演奏することを禁止されたわけですね、この店で*8

私はこれは世の中は間違ってると思います。もし、JASRACの運営が間違ってて、そのような結果になるんだったら、これは政治、文化庁が正さなければならない、そのように思います。自分の曲を自分で演奏できないような世の中、というのはどうなのかなと私は思います。そして、文化庁というのは政府の組織です。政府の組織なので、それは国民が選んだ政治家たちによって運営されているものです。

そして一般の人たちがよく誤解をしていますが、著作権の揉め事、これは著作権をもらえる一部の人たちだけの問題だと思ってるかもしれませんが、それは違います。なぜかというと、ライブハウスを演奏を見に行く、そのチケット代の中に著作権料が入ってます。皆様がお金を自分で払っているもの、それは例えばライブハウスを見に行って、誰々さんというアーティストの曲に感動して、だからお金を払っているものです。だから、その感動させてくれた作家に分配されてしかるものです。ですからこれは、皆さんお金を払っている国民すべての問題だと私は思ってます。それが、もし違うところに行ってる、そんなシステムがすぐに直るのに直さない、そういうことがあるなら、これはもう国民の問題だと思います。国民の声として、文化庁にその運営を調査して正しく直してもらうというのは、もう著作権者だけの問題ではなく、国民の問題だと思っております。

ということで、今日さきほどこの格好で、バンダナは着けてませんけどもこの格好で、文化庁のほうに上申書を提出してきました。

内容はさきほど私が説明したような、おおざっぱに説明したようなものですが、ちょっと資料を手元にお配りしてますので、鈴木弁護士のほうから補足ありましたらよろしくお願いします」

 

鈴木仁志弁護士「それでは私のほうから少しご説明をしたいと思います。

まず今日の上申の主旨はですね、あくまで末吉さん、それからいっしょに活動してきた私のほうが、現時点でこういう認識をしているということで、文化庁のほうにこの認識を伝えて、それについて調査をしていただきたいということでございます。

ですので、こちらの申し上げていることが正しい、ということで断定するという主旨ではなくて、我々が認識して発見したこと、そういったことをですね、文化庁のほうにご報告申し上げて、それに対して、調査のうえ適切にご判断をお願いしたいという主旨でございます。

 いま末吉さんのほうからだいぶ詳しくお話がありましたので、さっそくスライドの3ページ、お手元の資料ですとスライド3と4が上下ということで対比しやすくなってるのでございますけども、

JASRACさんの運営として、まず、コンサートの場合はどういう運用がなされているっていうのになりますと、プレイヤー、演奏する方がですね、直接自らこの曲を演奏したいので、演奏を許諾してくださいということでJASRACさんのほうに申し出る。そうするとそれを受け付けるオンラインの簡単なシステムがあります*9。曲ごとに申請がありますから、その申請された曲にきちんと使用料が払われる、こういう形になっております。

その次のスライドで、4枚目のスライドを見ていただくと、これがライブハウスという話になると、システムがガラッと変わる。コンサートホールとライブハウスというのは非常に相対的な区別だと思いますが、それで取り扱いが全然違う。

ライブハウスになりますと、JASRACさんのほうがあらかじめもうライブハウスと、全国のライブハウスと包括契約という形で、月額固定いくら、で曲目調査をする必要がない。ですから、どんな曲を何曲使おうが固定で月額いくらという形のシステムになっています。

そうしますと、いわばJASRACの側としてみれば、一回ライブハウスと包括契約をしてしまえば、あとはお金がもうチャリンチャリンチャリンチャリン入ってくるのを自動引き落としで待つだけ。あとは何にもする必要がない。やるとすればサンプリング調査ということで、曲目何やってるか全然把握してませんから、サンプル調査を行って、そのサンプルにヒットした曲に配分する、という運用になっています。

そうしますと、おそらくライブハウスからそういう形で使用料をもらってるにもかかわらず、演奏者のほうからまた個別の曲別の申し入れがあると、それに対応するのはおそらくITがない時代では非常に面倒だったであろう、ということで、演奏者のほうから申請がなされても、それは受け付けない。ライブハウスの経営者のほうが許諾申請してください、というシステムになっているということでございます。

そうしますと先ほどのようにですね、例えばライブハウスの側がJASRACと認識が一致していないので、そこについて紛争解決の手続きをやっている最中、その最中はそのライブハウスは、プレイヤーが自分が許諾を求めて、自分でJASRACから演奏をしたいと言っても、その演奏も拒絶されてしまうということになるわけでございます。

結局サンプリングの該当曲、サンプリングにヒットした、ごくわずかな曲、というふうに申し上げておきますが、そちらのほうに、それが全国で日々もう多数回演奏されたというふうに見なすわけですから、実際には、毎日毎日全国でたくさん演奏されている、本当に実際に演奏された曲の作者には、使用料の分配が行っていない、ということでございます*10

それで末吉さんの例ですと、200回を超えるライブを調査してみましたけれども、それに関して末吉さんが調べたところでは、このライブハウスの使用料というものは、ライブハウス、自分で末吉さんが曲を演奏した、その自分の曲の演奏料、使用料がですね、末吉さんのもとには1円も入っていなかったと、いうことでございます。

それから、上申書要旨というペーパーがございますけれども、その11ページをごらんいただきますと、このような例は他にもたくさんございまして、ブログに書かれておられる、今ここではお名前申し上げませんが、アイドルに対してですね、非常に著名なアイドルに対して曲を書かれた作者、作家の方が、その曲がですね、アイドルのライブで、もうどんなアイドルも持ち歌が少ないグループはみんな演奏するような定番になっているにもかかわらず、ライブでのですね、演奏使用料というものが入ってきていない、ということを(聞き取れず)に記載されております*11

それから同様に12ページを見ていただきますと、こちらの方もですね、バンドでやっておられるご自身のJASRAC管理楽曲に関して、何度演奏してもそれが曲(雑音のため聞き取れず)の使用料ということで入ってこない、ということでございまして*12、それで末吉さんのようなケースというのは、決して珍しくないのではないか、というふうなことが推測されるわけでございます。

で、このような取り扱いがですね、法的にどういう問題になるかといいますと、お手元に著作権等管理事業法というペーパーをお配りしましたけれども、その16条をごらんいただきますと、「著作権等管理事業者」、JASRACもそうですが、「著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない」という条項がございます。で、さきほど申し上げたような、プレイヤーのほうから許諾を求めても、いや、ライブハウスのほうから許諾申請してもらうからプレイヤーのほうからは許諾申請をさせませんよというような取り扱いが、正当な理由にあたるのかどうなのか。それから…」

 

(30分経過したためいったん配信終了。再開まで約90秒欠落)

(ここからJASRACの運用問題に関する記者会見(2)

 

「…ことで、この16条の違反があるかどうかということに関して、こちらはそれがあるというふうな調査をしている、ということで、そういうふうについて、文化庁のほうに取り上げていただきたいと、いう申し出をしたわけでございます。

それから、次、スライド7、8に行きますと…この点につきましては、包括契約とサンプリング分配という、まあ、ITがない時代の紙ベースでやっていたころの運用というものが、いまだに続いていて、コンサートではそれが克服されてIT化されているにもかかわらず、ライブハウスという部分に関してはそれが進んでいない、ということで、いまだに本当の権利者、実際に演奏された曲の権利者に使用料が分配されていない、ということ。これはですね、権利者に正しく分配するという、管理事業者の根本的な目的に、趣旨に反しているのではないだろうか、というような問題を提起しているわけでございます。

で、包括契約というものは、さきほど申し上げたように、一回お店と契約してしまえばずうっと続くものですから、そうすると、そこでお店としてみれば曲目を報告する必要もない、それからただ単にですね、自動引き落とし、固定月額になりますから、それがなされるだけであって、JASRACさんとしても何をする必要もない、ということで、曲目を調査するということが、ITがなくて非常に面倒くさい時代にはですね、まあ、これしかやり方がなかったのかもしれないな、という気はするんですが、今の時代でもって、まだ包括契約+サンプリングということをやっていることが、その管理事業法というものの根本的な目的に反しているんじゃないかという、そういう問題提起をしております。

それは具体的にはですね、著作権等管理事業法の条文のペーパーをもう一回見ていただきますと、第20条というところで、業務改善命令。文化庁長官が業務改善命令を出すことができるという条文ですけれども、その中で、一行目「文化庁長官は、(著作権等)管理事業者の業務の運営に関し、委託者又は利用者の利益を害する事実があると認めるときは」、業務改善命令を出すことができる、という条文になっております。ですので、まず委託者――権利者ですね、作家さん、ソングライター――の利益を害するということで、正しく使用された曲に分配されてない、ということでここにあたるのではないか。それから、きわめてですね、迂遠な利用法を強いられる、という意味で、利用者の利益を害する事実がある、ということ、これにも該当するのではないかということで、これを根拠に業務改善命令をお願いしたいという上申をしてきた、というところでございます。

私のほうからは以上です」

 

「あらかた説明して、し終わったと思うんですが、それでは質問の前に最後に言いたいのはですね、上申書、文化庁に上申するという行為を私生まれて初めてやりましたし、そういうシステムがあることも知らなかったんですが、聞いたところによりますと、上申をするのは勝手だけど、調べるかどうか、調べなきゃなんないという義務はないそうです。ですから変な言い方をすると、私の上申書を、失礼な言い方をすると握りつぶすこともできると、文化庁のほうは。それをぜひさせないように、ちゃんと調査して、調査していただきたい、そして業務を改善させていただきたい、というのは、著作権者がいうことではなく、やっぱり自分が、国民すべての問題であると私は思うんです。だから皆さん記者の方たちが、より多くの人たちにこの問題を伝えて、文化庁を動かしてほしい。それが私の今回の記者会見の一番大きな目的です。

で、本当に調査して、もしその通りであったら、本当に業務改善命令が必要だし、自分の曲を自分でも演奏できないような世の中にしておいてはダメだ、自分が感動した音楽にお金を払って、それが他の人に行くような世の中にしてちゃダメだ、という国民の皆さんの意識に私は呼びかけたいと、そのように思っております。ですので記者の皆さん、なるだけ多くこのことを国民の皆さんに伝えていただきたいと思います。以上です」 

 

後半(質疑応答)へ

*1:JASRAC作品コード 093-5524-3

*2:ライブハウスでの生演奏などJASRAC

*3:そのため「Live Bar X.Y.Z.→A」での演奏を中止して別の店舗で演奏した演奏者もいた一方、許諾を得ないまま演奏を強行した演奏者もいたことが裁判で認定されている

*4:著作物使用料規定取扱細則(社交場)(元参議院議員はたともこ氏がアップロードしている資料)第4条の「営業者が本協会と著作物使用許諾契約を結ぶ場合は、包括的使用許諾契約によらなければならない」を指している。なお、続く第2項では「前項によらない場合」(=包括契約以外の場合)についても規定されている

*5:大阪高判 平成19年(ネ)第2557号のp.19以降

*6:JASRAC作品コード 085-2700-8

*7:江川ほーじんFacebook 2016年5月1日付投稿

*8:この記者会見から1年半後に別の音楽家が同様の案件でJASRACを提訴している。自分の曲の利用許諾「拒まれた」 JASRACを提訴:朝日新聞デジタル

*9:J-OPUS(2004年5月開始)。なお、包括契約を結んでいるライブハウスも2015年3月31日から同システムを使用して利用曲目を報告できるようになったが義務ではない。この記者会見のあと、2019年秋頃からサンプリング調査方式から全曲報告方式に移行した

*10:サンプリング店に偏りがある場合は指摘の通り。偏りがなければ、多く演奏されている曲はサンプリング調査で十分に拾うことができる

*11:しほりオフィシャルブログ「~あいまいなあいのあいま~」2015年8月22日付記事後日談も参照のこと

*12:海保けんたろーの思考集積場 2017年2月28日付記事